07 January, 2009

無心に鍋を見守る人の話

年始から様々な出来事で振り回され兼ねない感があったのだが、はっとさせられる文章に出会った。ある保健教諭が書いたものだ。


・・・
保健とも教育とも全く関係のない本だが、・・・辰巳芳子さんの『あなたのために―いのちを支えるスープ』(文化出版局)である。

 実は料理の本で、題名を見て分かるとおり、様々なスープの作り方が載っている。もちろん、今晩のメニューの参考にすることもあるのだが、あまりに丁寧すぎる工程なため、慌しい毎日を過ごす私にとっては、あまり実用的意味はなく、むしろ、心を落ち着かせるための本と言ってもいい。

 ひとつひとつの材料を丁寧に扱い、ゆっくりと呼吸を合わせ、火と対峙し、なでるようにいとおしむようにスープを作っていく。そんなふうな気持ちで、私も毎日の生活を送っていきたい、と、この本を開くたびに思うのだ。特に大切にしている一節を書き出してみる。

愛につられ、無心に、
  よくなるように、よくなるようにと、
鍋中を見守る。
いつしか天は、用意のある人をつくり、
いざの時、必ず、手を差しのべる。

 保健室はなにもなくて当たり前。だからこそ、『用意のある人』でありたい、と、思っている。
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すばらしい。恐れ入りました。

エモーションとロジックが見事にマッチする情景を見させてもらった。心に促され、論理的に行動する。それは循環することがある。

だから、人は、起きている事象について情報を得ると、それが仮に自分のことでなくても、ときに一喜一憂し、ときにあれやこれやと言い、そして介入したりする。他方、そこから少し離れたところで見る立ち位置の心境は「ひとごと」と冷ややかに映るものだ。さもありなん、人のことにかまけているほど、楽ではないし暇ではないのだから。

しかし、どちらでもない人がいることを知ると救われる。

かつてレストランの厨房でバイトしていたことのある私は、そこで料理の基礎を学んだ。家族に、友人に作るときほど「おいしくなーれ、おいしくなーれ」と声をかけながらスープを作る心境は理解できるつもりだ。仕込みに時間がかかるのを承知で、タイミングを見計らい、たとえば少し火を弱め、たとえば少しの塩を入れる。


そう、腹のくくれた人の行動って、そういうことなんだよね。

少し長めの尺で動くメンタルを大切にしてみようか。



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