24 July, 2003

古庄紋十郎。

以前には「探偵ナイトスクープ」(関西系番組)で、また、本日の番組「トリビアの泉」でも特集されていたこの人物、古庄紋十郎。日本刀でも携えていそうな、なんとも哀愁の漂う日本男児らしい名前だ。しかし、その名前は、少年時代に録音されたあるレコードによって、まさに同年代の子供たちによって連呼されることになった。

男性ならほとんどの人が覚えているのではないだろうか。声がでなくなったり、かすれたり、という変化。そして、かわいい声がおっさんっぽい声へと変化してしまうのだ。どれほどの美声も、だれもが直面する変声期によって、なにがしかの変化を強いられる。ソプラノからテナーに変化する、なんてなだらかなものではないところがやっかいだ。

その様子を録音した、NHK制作のドキュメンタリーレコード、「変声期」。昭和35年当時東京放送児童合唱団員であり、ボーイソプラノの美声の持ち主だった古庄紋十郎に、12歳から15歳までの「声変わり」を見事に記録している。「シューベルトの子守唄」を歌う声は、最初は透明感のあるボーイソプラノ、徐々にハスキーが少し入り、歌声としては聴くにつらい時期を経て、やがて低めの声へと変声していく模様を時系列で聴くことができる。

大多数の子どもが変声期を迎えるのはちょうど中学生の時期だろう。思えば、中学校の音楽の授業では歌のテストがあった。声がでない日には、歌うのがいやだなあと思ったような記憶がよみがえってきた。声が高い音へぜんぜん伸びなくなった友人の歌声を笑ったりもしたかもしれない。先生(小倉千賀子先生)は、親切な人だったから、その上手下手だけではなく、その成長ぶりも観察していて、それでこの「変声期」を皆に聞かせたのかな。

中学校の音楽の先生という立場は、実に、成長に伴う変化の大きな時期に、精神的、身体的な変化を観察するのに、かなり良い位置にいるように思う。私は、中学での音楽の授業中にこのレコードを聞いたが、わたしを含め、少なからぬ人間が、この古庄紋十郎のモノマネをしていたように記憶している。まあ、良く言えば、ある程度の不安緩和には役立っていたということかな。この歌のせいで授業中の居眠りが多かったなんてことはあるまいな。

「昭和○○年、○月○日、古庄紋十郎。ね〜むれ〜、ね〜むれ〜♪」

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